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出国税の創設
- 2016.12.01
平成27年7月1日以後に出国する方について、出国税が創設されました。
シンガポールや香港などを利用した節税スキームがこれからかなりやりづらくなりそうです。
この制度は日本独自のものではなくアメリカ、ドイツ、フランス、カナダ、イギリスなどでは、すでに導入されています。
個人富裕層が日本を出国して非居住者となる際に、株式などを決済したこととして、保有する株式などの含み益に課税するというもので、未実現のキャピタルゲインに対して課税されることになります。
同族会社やベンチャー企業オーナーの自社株売却に伴う譲渡益は、現行の所得税法においても、日本国内においてある程度課税が行われていると言えます。しかし、上場株式などで資産運用をしている投資家については、個別銘柄を25%以上保有するというような特殊関係株主であることは一般的ではないので、これらの投資家の方が日本から出国して日本非居住者となった後の株式譲渡益には、日本においては課税がされないことになります。
それらの投資家対策として出国税が導入されようとしているわけですが、この出国税とは次のような内容となっています。
- 対象者: 有価証券等又は未決済デリバティブ取引等に係る金額の合計額が1億円以上である者で、出国の日前10年以内に居住者である期間の合計が5年超である者が対象とされます。
- 内容: 所得税法に規定する有価証券若しくは匿名組合契約の出資持分又は未決済デリバティブ取引等を有する場合には、出国時に、当該有価証券等の譲渡又は当該未決済デリバティブ取引等の決済をしたものとみなして、事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額を計算することとなります。
通常、株式などの含み益については株式などを売却した者が居住している国に課税権があるとされています。しかし、この原則があるにもかかわらず未実現のキャピタルゲインに課税しようとするのは、日本ではキャピタルゲインに現行で20.315%(復興特別所得税を含む)の税金がかかりますが、シンガポール、香港、、スイス、マレーシアなどにおいてはキャピタルゲインについて非課税という取扱いがされており、富裕層においては株式を保有したままこのような非課税国に移住することによって、日本における税負担を回避するという節税スキームが生まれてくるわけです。
この出国税を創設することによって、日本における課税権を確保するとともに、武富士事件のような争いが再燃することを防止する効果も期待されております。